チャーチルの名言

Title: Churchill's words of wisdom

 

 

オリジナルの記事はこちら

 

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皆様の中に、このような思いを感じられたことのある方はおられますか?

どうして正しいことが世の中に伝わらないのだろう?どうして、真実が伝わるまでに、こんなに時間がかかるのだろう?

このように感じるのは、現代という時代だけではないようです。

約75-80年前の第二次世界大戦中、イギリスで首相として采配を取り、戦後は、文筆家としても活躍したウィンストン・チャーチルが次のような言葉を残しています。


“A lie gets halfway around the world before the truth has a chance to get its pants on.”

Winston Churchill

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インターネットでこの言葉を調べると、次のような日本語訳と意味が出てくることがあります。

訳「嘘が世界を半周したころ、真実はまだズボンを履こうとしている。」

意味「嘘はあっという間に広まるのに対して、真実の弁解はあまりにものろい。」

出典はこちら。
https://meigennavi.net/word/01/017339.htm
https://meigen.club/winston-churchill/3/

 

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先日、その訳と意味を読んで、「あれ、ネガティブなトーンで『のろい』とか『真実はまだズボンを履こうとしている』と書かれているけれど、そのような訳や意味ではなかったような…。」という思いがわきました。

私が学生時代、遠山顕先生のNHKラジオ英会話というプログラムを聞いていた時、遠山先生はそのようには仰らなかった記憶があるのです。

私の記憶では、遠山先生の教え方では、「たとえ嘘が広がっていたとしても、最後に、真実が人の心に入るんだ!」というようなニュアンスでした。高らかに歌い上げるように、非常にポジティブな言い方で、後半の、“truth has a chance to get its pants on.”という部分をお話しくださっていたように記憶していたのです。

 

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余談ですが、学生当時の私の理解を思い出していくと、こんな感じ。「たとえ、嘘が広まっても、最後に真実がパンツの中に入るんだ!すごい!!」

なぜか、真実がパンツの中に入る、と記憶していたのです。ですから、インターネットで調べた時に、訳が「真実はまだズボンを履こうとしている」となっていて、ちょっとびっくりしつつ、どういうこと??と記憶を元に考えていた次第です。

調べていくうちに、イギリス英語とアメリカ英語の違いにたどり着いてきました。以下、チャーチルがこの文章を書いた時のイギリス英語は定かではないのですが、現代イギリス英語で考えています。

イギリス英語でpantsとは、下着のパンツを指すようです(註1)。アメリカ英語ではズボンという意味だそうです。チャーチルはイギリス人ですので、遠山先生はパンツと教えてくださっていたのでしょう。

イギリスでget on にはいくつもの意味と使い方があるそうです。その中でも、「成功する」「乗り物に乗る」等という意味があるそうです(註2)。

“the truth has a chance to get its pants on” のitsは何を指すのだろう?直近の名詞ということで、”the truth’s pants”であるように考えていましたが、冒頭の”A lie gets…” とかけて、”the world’s pants”なのかな?

確信はありませんが、仮にもしそうだとすると、総合して、「真実が世界の人々のパンツにたどり着くことに成功する=真実が世界の人々に届く」という意味合いなのかな?そうすると、「真実が人々のパンツの中に入る」という昔の記憶に整合性が取れるようにも思います。

本当のところはどうだったのだろう?インターネットで調べても、遠山先生が教えていらしたときのその訳は出てきません。いつか機会があればお伺いしたいものです。

註 1:https://media.studytown.jp/american-english-and-british-english-differences/
註2:https://britisheigo.com/british_word/4548.html

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以上を総合し、現時点ではこのような意味なのかな、と考えています。以下、私の個人的な訳です。

A lie gets halfway around the world before the truth has a chance to get its pants on.
訳:「嘘が世界を半周した頃、真実が(世界の人々の)パンツに到達するチャンスを得る。」

意味:「たとえ嘘が世界中を覆いつくそうとしても、嘘が世界を半周した頃に、真実が世界の人々の心に到達するのだ。」

このように訳すと、個人的には、チャーチルの名言 “Never, never, never give up.”(絶対に、絶対に、絶対に、あきらめるな。)の精神ともつながるように思います。

 

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このような視点から、この言葉を味わってみると、チャーチルが何を見ていたか、が偲ばれます。

(争いのエネルギーがある場では特に) まず嘘がまことしやかに流れやすい。この争いというのは、ここでは、真実と嘘がぶつかり合う葛藤のエネルギーのある場のことです。

嘘には、嘘というエネルギーがあります。嘘があるからこそ、対になるように、真実があります。真実には、真実と言うエネルギーがあり、互いに相容れません。ですから、ぶつかり合い、葛藤が生じます。最後に、真実が勝つまで、その戦いは続きます。

最後に真実が勝つのでしょうか?自分にとっての真実を手に入れると、人は心が不安定に揺れ動く感覚から解放され、穏やかな落ち着いた気持ちを味わい、自由になります。ですから、真実を求めて答えを探し続ける人たちは、決してあきらめずに、答えを探し続けます。そして最後に、真実を得て、自由になります。真実を求める人たちは、いつの時代も存在します。ですから、私は最後に真実が勝つのではないか、と考えています。

真実と嘘のこのぶつかり合いは、一見意味のないことのように見えます。真実が見えている人には、どうして、他の人には真実が見えないのか?と思われることもあるかもしれません。でも、その葛藤には意味があります。真実というものを、真実だと、明確に示すためです。

嘘がないところには、真実というものは、「真実」という名前を持つ必要がない。なぜなら、そこにあるものが全て真実だから、嘘というものを改めて定義する必要がないのです。

 

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不安や希望が渦巻く中で、真実が見極めにくい状況では、どのように真実が人々の心に到達するでしょうか?以下、一般的な例を示します。

まず、嘘が人々に広がって、多くの人々がそれを信じる。よく知らないことであれば、なおさらそうです。人の不安がそうさせることもあるでしょうし、一部の人たちが利益を得るために、意図的に偽った情報を流していることもあるかと思います。

それから、その嘘に気が付いて、だまされたことにショックを受け、怒る人々が現れる。嘘を正さなければならないという思いが湧いて、注意深く真実を見極めて、人に伝え始める人々が現れる。そこで遂に、真実が人の心に届き始めます。

真実を求めている人からすると、嘘が流布する速さは、止めようの無いような速さやパワーに感じたりして、「いったいどうして、こんなことが起きているのか。止めようのない自分が無力だ。世の中がおかしくなっているのに、だまされている人が気の毒だ。どうやったら助けられるのか。でも、自分の言っていることを信じてもらえないのが、つらい。」と悲観的に感じることもあるかもしれません。

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そもそも、真実というのは、時間をかけて、岩にしみ出る清水のように、ゆっくりと得られるものです。ですから、深く考えれば考えるほど、何が真実なのか、という問いについて、迷いが出てくることもあります。逆に、迷うことで、真実がより確かになることもあります。

チャーチルだって、同じように悩んだのだろう、そして、その仕組みについて考えた結果、このような名言になったのではないか、と思いました。

真実を探し始める時、自分の内なる心の声は、最初は小さな声かもしれません。でも、その小さな声が、つぶやきます。「○○は真実だ。□□は真実ではない。」。その声が自分自身でも見過ごせないほど大きくなったら、ぜひ、このチャーチルの言葉を思い出してください。そして、自分にとっての真実を自分に尋ねましょう。

真実を人々の心に届け始める時、最初はだれも信じてくれないということも、よくあることです。自分にとっての真実を、相手に伝えてもいいものかどうか、どのように伝えればよいか、迷うこともよくあります。

でも、真実は、時にはその内容が厳しくても、結果的に、人を救い、慰め、希望を持たせ、未来を創ります。たとえ、今は、真実が人に伝わらなくて孤独だと思っても、自分にとっての真実を、どのようにしたら、自分自身で育てることができるか、自分に問いかけてみましょう。

今まさに、声を上げようとしている皆様へ、お役に立ちますと嬉しいです。